中国の研究開発ネットワークの発展

中国の研究開発ネットワークの発展

 

戸堂康之(早稲田大学)

柏木柚香(早稲田大学)

 

前回のコラムでは、世界の企業のサプライチェーンに関するデータを利用した分析を紹介した。今回は、特許の共同所有ネットワークのデータを使った分析を紹介したい。特許の共同所有は必ずしも共同開発を意味しないが、研究開発、イノベーションに関する何らかのつながりがあることを示していると考えられる。ここでは、ビューロ・バン・ダイク社が整理したOrbisというデータを使う。このデータは世界の2億企業をカバーしているという巨大なものである。

そのうち、特許を他社と共同所有する企業および研究機関3万社足らずを抽出し、その特許共同所有関係を可視化したのが図1である。(A)は2005~07年に申請された特許、(B)は2011~13年に申請された特許の共同所有ネットワークで、主要国を色分けしている。この図は、共同所有関係がある企業同士の間に重力が働くように考えて作成されているので、つながりを持った企業同士が固まって表示される。また、世界の特許共同所有ネットワークの中で中心的な企業が図の真ん中に来る。

すると、いずれの年も日本や韓国企業は外国企業と共同所有ネットワークが希薄で、自国内で閉鎖的に固まっていることがわかる。中国は、2005-07年時点ではほとんどつながりを持っていないが、2011-13年ではむしろ日本や韓国よりもネットワークの中心に位置し、アメリカとのつながりを拡大させ始めているように見える。日本企業が共同所有する特許のうち、海外企業との共同所有は13%であるが、中国の場合は32%で、アメリカの40%、ドイツの34%とくらべても遜色はない。

たった6年で、このように中国が世界の研究開発ネットワークの中で台頭してきたことは注目に値する。むろん、中国の特許出願件数は2011年にはすでに世界一になっている(特許庁『特許行政報告書2016年版』)ので、量的な面で研究開発が進んでいることはもともとはっきりしていた。しかし、ネットワークの可視化によって、中国が全世界の企業ネットワークの中で他国とのつながりを構築していることも明らかとなった。同じ期間中に、閉鎖的なネットワークから脱皮できていない日本は大いに学ぶべきであろう。

なお、中国以外の新興国においては、国際的な研究開発ネットワークはほとんど発展しておらず、そもそも研究開発自体が十分に行われていない。例えば、2014年には中国の研究開発支出の対GDP比が2.04%であったのに対し、マレーシアでは1.26%、タイでは0.48%、インドでは0.89%である(IMD、World Competitiveness Online)。これらの新興国においても、中所得国の罠にはまってしまわないように、研究開発支出および先進国との研究開発ネットワークを拡充してくことが求められる。

図1:特許の共同所有ネットワーク

(A)2005-07年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(B)2011-13年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上