新興国のサプライチェーンにおける政府の役割

新興国のサプライチェーンにおける政府の役割

戸堂康之(早稲田大学)

柏木柚香(早稲田大学)

 

近年、新興国を含む世界の多くの企業情報を含んだ大規模なデータが利用できるようになってきた。特に、サプライチェーンや資本所有関係などの企業間ネットワークについてもデータが整備されつつある。ここでは、特にサプライチェーンの情報を含むFactSet Revere社のデータを利用した研究成果の一部を紹介したい。

このデータは、企業の財務諸表やウェブサイト、マスコミ報道などのオープンになった情報を整理して作成されたもので、以前はアメリカ企業中心であったのが、最近ではアジア企業もそれなりに含まれるようになり、2015年には企業間取引の情報がある企業は57,693社含まれている。そのうち、アメリカ企業が10,234社、日本3,445社、中国4,690社、韓国1,572社、マレーシア539社となっている。

このデータには、政府が絡む取引も含まれているので、サプライチェーンにおける政府の役割を分析することができる。例えば、図1は一人当たりGDPと政府のネットワーク中心性(ネットワークの中でどの程度の中心に位置しているかを表す指標)の関係を国別にみたものである。取引先の数と総企業数の割合を使っても、PageRankという取引相手の中心性を加味した指標を使っても、いずれにせよ一人当たりGDPが大きいほど政府の中心性が小さくなるという関係が見て取れる。

このように、新興国ではサプライチェーンにおいても政府の役割が大きく、政府と企業との癒着が起こって市場経済を歪めている可能性がある。したがって、現在の先進国がそうであるように、経済発展が進むにつれて政府の役割が縮小することが期待される。

とは言え、国によっては政府の役割が大きいことが必ずしも問題になっていないかもしれない。例えば、中国と日本の政府の取引ネットワークを可視化した図2を見てみよう。この図では、中心の赤い丸が中央政府を表しており、その他の丸は中央政府が財やサービスを調達した国内外の企業である。さらにネットワークのコミュニティ分析の手法を利用して、つながりの強い企業群をグループ化して色分けしている。この図を見ると、中国政府は日本政府と比べて多くのグループと取引をしている。政府の取引先のうち海外企業の割合は、日本では13%だが中国は23%であり、中国政府は海外企業との取引も多い。このように政府が多様な企業と取引をしていることが、大きな政府が市場経済をゆがめるというマイナスの作用を緩和している可能性がある。

このように、大規模な企業データのネットワーク分析によって、これまではできなかった分析ができるようになってきている。この科研費プロジェクトで、このような分析をぜひ進めていきたい。

 

図1:一人当たりGDPと政府のネットワーク中心性

(A)取引先の数

 

(B)PageRank

 

図2:政府の取引ネットワーク

(A)中国

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(B)日本

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上