Hayami Conference 2016 報告

Hayami Conference 2016報告

 

木島陽子(政策研究大学院大学)

 

2016年12月10日-11日の2日間にわたりHayami Conferenceが政策研究大学院大学にて開催された。この会議は、日本における開発経済学の生みの親たる故速水佑次郎先生のリーダーシップの下、2001年から毎年12月に実施されている(より詳しい歴史的な経緯については「経済セミナー」2017年4/5月号を参照されたい)。Hayami Conference2016の幹事は、東京大学の鈴木綾准教授、小樽商科大学の松本朋哉准教授と執筆者の3人が務めた。代表して会議の報告をしたい。

Hayami Conferenceは、1-2本の招待講演と、12本程度の一般公募の論文発表からなり、1つの論文につき発表30分、討論者によるコメント10分、参加者からの質問・コメント10分、計50分が配分されており、10時から18時まで、休憩時間は昼食時と午後の10分のみと、非常にインテンシブな構成となっている。

2016年の会議では、一般公募に30本の投稿があり、そのうち12本は海外からであった。幹事の3人により14本の論文を選び、招待した発表者2名を加え、16本の論文発表がおこなわれた(うち大学院生による発表が3本)。設けられた6つのセッションは、(1) State and Economic Development(国家と経済発展), (2) Education 1(教育(1)), (3) Health(保健), (4) Education 2(教育(2)), (5) Agriculture(農業)(6) Poverty and labor(貧困と労働)である。

2016年の会議における投稿・発表論文には以下の二つの特徴として挙げることができる。第1の特徴は、自ら収集したデータを使った研究が多いことである。速水先生が重視してきた現地調査型の研究が普通のこととなっていることを示している。第2の特徴は、現在の開発経済学では主流になっている無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)によるインパクト評価を行う研究が多かったことである。RCTは研究対象が限られるため、結果として教育、保健分野の論文が多くなった印象である。

招待講演には、ハーバード大学のMelissa Dell教授と、コーネル大学のBryant Kim教授にお願いした。Dell教授は、1日目の最初に“State Capacity, Local Governance, and Economic Development in Vietnam”という論文を発表した。彼女の論文は、速水先生も取り組んできた経済発展における制度の重要性を検証したものであり、Hayami Conferenceのオープニングにふさわしいテーマであった。非常に入手困難な村単位の歴史データと厳密な識別戦略(Regression Discontinuity:RD)を組み合わせ、開発の肝となるテーマに取り組む姿勢からは多くの刺激を受けた。

1日目の最後はKim教授による発表であった。HIV/AIDS感染率の高いアフリカ南部マラウィの男子高校生を対象に、包皮切除を無料で受けられるクーポンをランダムに配布し、包皮切除のHIV-AIDS抑制効果をRCTにより厳密に検証した研究である。非常にセンシティブなテーマであり、正確に感染率を計測することは困難であるが、Kim教授は医療の専門家としての見識を活用し、問題を克服している。しかし、分析結果は予想とは逆に、HIV感染率がかえって高くなるというものであり、エビデンスベースの政策立案の重要性を再認識することとなった。

今回の経験を踏まえて、次回会議(Hayami Conference 2017)に向け計画していることを述べたい。

(1)フルペーパーをもとにしたセレクションの実施: 幹事が交代してから初めての大会であったこともあり、前年までと同様に”An abstract of no more than 200 words”を提出してもらい、発表者を選ぶ方式をとったが、論文の詳細がわからず、セレクションに苦戦した。また、選ばれたもののフルペーパーが大会直前になっても完成していない論文もあった。すべての論文を前もって読んで、討論を行うという本会議の伝統を引き継ぐためにも、フルペーパーでのセレクションに変更予定である。

(2)発表論文数の削減:投稿者の多くに発表してもらうために、2日間で16本の論文をカバーした。例年に比べて発表論文が多かったことから、2日目の最後には疲労困憊の人が多かった。フルペーパーであれば論文の質をより正確に測ることが可能になるので、次回の会議では発表論文数を12本程度に減らす計画である。

(3)Hayami賞の創設:常連の参加者たちからの意見を受け、まだ具体的にはなっていないが、2017年大会からは新しい試みとして ジョブマーケットに出ている人を対象に、ベストペーパーを選びHayami賞を授与することを考えている。この賞を取った学生が就職に有利になれば、ますますいい論文が集まるようになり、Hayami Conferenceの魅力を高めることになるのではないだろうか。今後もより魅力的な会議になるよう進化を続けていければと思う。

一流の開発経済学者の発表を聞き交流できることがHayami Conferenceの魅力を高めている要因のひとつと考えている。幹事として誰を招待するか頭を悩ませた。招待者のセレクションや声掛けに関して前幹事である東京大学の澤田康幸教授(現アジア開発銀行)と政策研究大学院大学の園部哲史教授の人脈や助けなしには成しえなかった。最後に感謝を申し上げたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dell 教授の発表

以上