研究目的

 技術の普及やイノベーションが最も活発なのは、深い信頼でつながっている集団が、別の異質な集団、つまり「よそ者」ともつながっている場合であることが、経済学や社会ネットワーク論の研究によって明らかになっています。しかし現実には、地域内の強固なつながりがむしろよそ者とのつながりを排除し、それがよそからの新しい知識の流入を阻むことで経済発展の障害となることは少なくなく、それが悪化して新興国における経済停滞(中進国の罠)の1つの原因になる可能性もあります。本研究は、「地域内・国内の強固な社会ネットワークが政治的な排他主義を生み、よそ者とのつながりを排除することがある」との仮説を、インドネシアやベトナムなどの新興国のフィールド調査によって収集するデータによって検証し、ネットワーク・ゲームや行動経済学的分析によって理論的にも説明することを目的とします。

 そのために、ミクロ実証を専門とする開発経済学者、社会ネットワーク論を専門とする工学系研究者、ゲーム理論を利用した意思決定論を専門とする工学系研究者という多様な専門性を持った研究者からなる学際的なチームを構成しています。

 本研究によって、どのような状況で地域・国が政治的に排他的になり、結果として経済発展が阻害されてしまうかについての洞察が得られることが期待されます。これらの成果を領域内の他の計画研究の成果と融合することで、経済と政治の相互作用を解明し、学術的にも、新興国が「中進国の罠」を回避するための政策面でも、大きな貢献ができるのではと考えています。