代表者挨拶

1997-98年のアジア経済危機以前の時期については、国家の役割を強調する研究(Chalmers Jonson; Alice Amsden, Robert Wade)、市場親和的な公共政策に注目する世銀のEast Asian Miracleの研究、市場拡張型の制度の役割を分析する青木昌彦らの研究など、国家と市場の関係についての研究が活発に行われていましたが、危機を契機にアジア経済はcrony capitalismだとの批判を受けたこともあり、政治と経済の相互作用についての研究は後景に退いてしまいました。政治学研究と経済学研究が分離してしまったかの様相を呈したのです。しかし、危機以後アジア経済はV字型回復を遂げ、危機以前に始まっていた都市化、階層分化、教育水準上昇といった社会変動が深化し、社会の様々な要求を政治的に調整することが、経済成長に必要な投資環境を維持する上で以前にも増して重要になってきました。アジア諸国だけでなく、急速な経済発展を遂げつつある「新興国」では、多様化する社会の利害を調整する政治制度の確立が緊急の課題となっています。本研究では、このような問題意識の下に、新興国における経済社会変動と政治変動の関係――ポリティカル・エコノミー――についての研究を進めたいと思います。