研究目的

本研究では、新興国研究を一つの学術領域として確立するのに貢献するために、(1)途上国の中で特定の国々が成長著しい「新興国」になってきたのはなぜなのか、(2)新興国が先進国の地位を獲得する上で直面する課題は何か、という2つの問題を研究課題として設定する。

(1)については、東アジア経済危機以前の経済発展については多くの蓄積があるので、焦点を危機後の経済回復と成長のメカニズムに置く。同時にブラジル、インド、南アフリカ共和国など東アジア以外の事例との比較によって、「新興国」としての共通性と多様性を明らかにしたい。その際には、そもそも経済発展に必要な長期的投資を可能にする政治的安定がいかに達成されたのか、また政府が経済活動に介入する場合、輸出競争力を失わせるような非効率を避けることができたのはなぜか――が基本的な問いとなる。

(2)については、新興国に共通する課題として(i)技術輸入・適用段階から卒業して、いかに技術革新能力を向上させるか、(ii)都市・農村間あるいは産業間の格差をいかに是正するか、(iii)社会保障や労働条件改善を求める声の高まりにいかに応えるか――に着目する。経済発展の過程で現れるこうした問題の解決には、様々な社会的・政治的利害の調整が不可欠であるので、政治と経済の相互作用を分析するポリティカル・エコノミーの手法を採用することで、民主化が進んだり、社会的異議申し立てが頻繁に起こったりする状況の中で、いかにして投資と消費の間の調整を図り、コストと便益の再配分を行なおうとしているかを分析する。