公募研究について

平成28年度~29年度を期間とする公募は、平成27年の科研費申請の時期に行いますので、ふるってご応募ください

領域略称名:新興国の政治経済
領域番号:1501
設定期間:平成25年度~平成29年度
領域代表者:園部 哲史
所属機関:政策研究大学院大学政策研究科

中国、インド、ブラジル、インドネシアなどの「新興国」が経済的にも政治的にも著しく台頭している。しかし、これらの国々の発展は、必ずしも順風満帆というわけではない。世界の政治経済の中で重要度が増しつつある新興国が不安定化することは、世界に多大な影響を及ぼすために、世界全体として対応を考えるべきであるが、新興国の政治と経済に関する理解は、まだ断片的なものにとどまっている。そこで、本研究領域では、政治学、経済学、歴史学、地域研究などが連携して、ミクロ、マクロ、グローバルな視点から新興国の政治と経済のダイナミズムを体系的に理解することを目指している。

本研究領域の目的を達成するため、三つの研究項目(ミクロ実証、マクロ比較史、政治経済研究)についての五つの「計画研究」により重点的に研究を推進するとともに、これらの研究項目に関連する独創的な研究を公募する。

公募研究はこの五つの「計画研究」での研究内容を補完する、もしくは研究項目間をブリッジするような斬新な研究を積極的に採用する。多角的な視点や異分野からのアプローチを歓迎し、新興国を直接の対象としない課題であっても、新興国を体系的に理解するために有益な研究提案であれば対象とする。また、必要に応じて海外での現地調査をおこなうなど、若手研究者が積極的にフィールドへ赴くことを重視している。

研究期間は2年とし、単年の研究は公募対象としない。また研究分担者を置くことはできない。

公募研究の採択目安件数は、研究計画の内容により、単年度当たりの応募額250万円を上限とする研究を6件程度、150万円を上限とする研究を6件程度予定している。

公募研究の仕様や記入要領などは文部科学省のホームページ
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/boshu/1339062.htm)を参照のこと。

本領域研究で実施する五つの「計画研究」の内容は以下のとおりである。

(計画研究)

A01 新興国におけるインフラ建設、土地制度改革と教育改革の政治経済学的ミクロ実証研究

多くの新興国が、産業構造の高度化、地域間の経済格差の是正、大都市の混雑緩和などの重要な政策課題をクリアできるか否かは、国家の政策決定の能力のほかに、政策の実施プロセスにおける行政能力や、ガバナンス、あるいは理不尽な政治圧力の排除といった能力にも大きく依存する。本研究では世界で初めて、こうした国家の能力をミクロ経済学の視点から実証的に把握する。こうした新興国の研究の重要な目的の一つは、これから新興国になることが有望視される途上国への、新興国の経験を応用することにある。また、それらの国々との対比によって既に新興国となった国々の特徴がより明瞭に理解できると期待されることから、両者を比較する意義は大きい。そこで狭い意味での新興国のみならず、NEXT11と呼ばれる国々や、過去10年にわたり安定的に高い経済成長を記録したアフリカの国々、アジアとは異なる成長の軌跡を描いてきたブラジルも調査の対象とする。

A02 経済発展に資する社会ネットワークの多様性を阻む要因に関する政治経済分析

社会ネットワークが技術伝播や技術進歩を通じて経済成長に及ぼす影響については、深い信頼でつながっている集団が、別の異質な集団、つまり「よそ者」ともつながっている場合に、技術の普及やイノベーションが活発になることが既に明らかになっている。しかし、1970年代に多くの途上国が対内直接投資を規制されたように、地域内や国内の政治的要因によって、よそ者とのつながりが排除されることも少なくない。本計画研究は、経済成長に寄与するはずのよそ者とのつながりがなぜ十分に構築されないのかという問いに対して、地域内・国内の濃密な社会ネットワークが政治的な排他主義を生み、よそ者を排除する傾向があるという仮説を立て、新興国でのいくつかの事例について実証的な分析を行う。大規模な世帯調査や企業調査と合わせて社会実験も行い、因果関係を適切に定量的に実証する。また実証的な結果を理論的に説明するために、社会ネットワークを組み込んだゲーム論や経済合理性を必ずしも仮定しない行動経済学的分析を用いる。

B01 新興国の台頭による世界/地域秩序変容と国家形成・建設の比較研究

本研究の第一の目的は、新興国の台頭にともなう世界秩序、地域秩序の変容がどのような意義と効果を持つものであるか、これを19世紀半ばから20世紀初頭にかけてのアメリカ、ドイツ、日本の台頭、第二次世界大戦後の日本、ドイツの台頭などと比較し、分析することである。本研究の第二の目的は、新興国の国家形成・経済発展について、チャールズ・ティリーをはじめとするマクロ比較史的な国家形成研究、チャルマーズ・ジョンソンをはじめとする開発主義体制論の成果を批判的に取り込みつつ、新興国予備軍となりうる開発途上国も視野に入れて、国家建設戦略と開発戦略の相互作用、国軍・官領域工・政党の勢力配置と国家建設・経済発展の関連性等について比較の観点から、これまで欠けていた体系的分析をおこなうことである。

B02 新興国における経済発展経路の国際比較

過去20 年余りのあいだ、先進工業国の経済的停滞のなかで、いくつかの新興国で高い経済成長率が持続しているのはなぜか。本計画研究は、従来の先進国中心の歴史理解を相対化し、それぞれの新興国に固有の環境のなかで、技術と制度が長期的にどのように発展してきたか、つまりその「径路依存性」に焦点を当て、この問いに答えることを第一の目的とする。

長期の経済発展径路は、国家から村や家族にいたるさまざまな制度によって規定されると同時に、帝国や国家の形成に大きな影響を与える。しかしそこに見られる政治と経済の相互作用を経済史研究のみによって検証することはできない。また、西洋中心史観は、西洋近代に現れた制度の環境史的思想史的特質を、他地域のそれとの徹底的な比較によって相対化する意欲に欠けていた。本計画研究は、政治と経済の関係を、近代に成立したパラダイムを前提せず、それに影響を与えるすべての基本的な要因の組み合わせを見据えつつ再考することを第二の目的とする。

C01 新興国における経済社会変動と政治体制変動の相互作用の研究

本研究では、新興国研究を一つの学術領域として確立するのに貢献するために、(1)途上国の中で特定の国々が成長著しい「新興国」になってきたのはなぜなのか、(2)新興国が先進国の地位を獲得する上で直面する課題は何か、という2つの問題を研究課題として設定する。(2)については、新興国に共通する課題として(i)技術輸入・適用段階から卒業して、いかに技術革新能力を向上させるか、(ii)都市・農村間あるいは産業間の格差をいかに是正するか、(iii)社会保障や労働条件改善を求める声の高まりにいかに応えるかに着目する。経済発展の過程で現れるこうした問題の解決には、様々な社会的・政治的利害の調整が不可欠であるので、政治と経済の相互作用を分析するポリティカル・エコノミーの手法で上記課題を探求し、「新興国」としての共通性と多様性を抽出することを研究目的とする。