A01 公募研究採択(2016-2017) 牧野

A01 新興国におけるインフラ建設、土地制度改革と教育改革の政治経済学的ミクロ実証研究

 

研究課題名: 政治家と教員のパトロン・クライアント関係に関する実証研究

研究課題番号: 16H00741

研究者氏名: 牧野百恵

所属・職名: 独立行政法人日本貿易振興機構 アジア経済研究所・研究員

 

研究目的: 本研究では、途上国が新興国、先進国へと移行するために不可欠な、識字・教育水準の向上にむけた教育改革がなぜ進まないのか、「政治的に受け入れられない」といわれる教育改革の実態を実証的に明らかにし、教育政策への含意を導くことを目的とする。このため、インド同様に多くの非識字人口を抱え、かつ今後インドのような成長を目指すパキスタンを対象とする。パキスタンにおいて独自の教員・家計調査を実施し、政治家と教員がパトロン・クライアント関係にあり、それが選挙に影響を与えるとの仮説を実証する。

2016年度は、現地研究協力者とともに、教員・家計調査の質問票の作成、サンプリングおよび本調査を実施し、滞りなく終了した。教員に対する質問票では、公立校と私立校の教員について、採用と配置転換に関して政治権力が関係している程度の違いを把握できるよう工夫した。家計調査の質問票には、選挙に関して教員がもつ影響力の程度を把握できるような質問を盛り込んだ。

2017年度は、前年度に実施した教員・家計調査のフォローアップ調査を実施するとともに、本調査・フォローアップ調査で収集したデータをもとに、実証分析・論文執筆、学会発表を行った。

フォローアップ調査で新たに分かったことは以下の2点である。

(1)教員の縁故採用について。採用プロセスがコンピュータ化される2012年以前は縁故採用の余地があったため、本家計調査のなかの教員は縁故採用のものもいると思われる。コンピュータ化以前は、州議会や連邦議会の議員がクォータを有し、候補者のリストを県に提出していたこともあった。この場合、リストに載っているものが教員採用に優先された。県の採用担当者に圧力がかかっていた以上、総選挙と教員採用との関係は強いと思われる。

(2)政治権力とつながりがあることの教員のメリットは何か。教員3年目以降は配置について希望が出せ、希望どおりの配置であれば、以降の異動はほとんどないため、異動に関するメリットではないのかもしれない。ただし、異動がないという状態が政治的支援を条件としたある種の均衡状態で、メリットと考えることもできそうである。明示的なメリットは、悪い報告が県や郡の役人に上がらないことが考えられる。村にはCommunity Development Boardがあり、制度上は教員の欠勤等について報告することになっているが、Boardのメンバーは教員輩出家計を含む村の有力者たちで構成されており、悪い報告が上がりにくい。

実証分析の結果分かったことは、村の人々の投票行動はインフォーマル・ネットワークに強く依存し、教員輩出家計が投票行動に何らかの影響を及ぼすことである。インフォーマル・ネットワークのメリットは、クレジットや無償労働力の供与である。

 

【論文】

<2018>

[1] Makino, Momoe. “Female Labor Force Participation and Dowries in Pakistan,” mimeo, IDE-JETRO.

<2017>

[1] Makino, Momoe. “Dowry in the Absence of the Legal Protection of Women’s Inheritance Rights,” Review of Economics of the Household, 2017, DOI: 10.1007/s11150-017-9377-x

[2] Makino, Momoe. “Birth Order and Sibling Sex Composition Effects among Surviving Children in India: Enrollment Status and Test Scores,” Developing Economies, forthcoming.

<2016>

[1] Makino, Momoe. “Birth Order and Sibling Sex Composition Effects among Surviving Children in India,” invited to revise and resubmit to Developing Economies, October 2016

 

【学会】

<2017>

[1] Makino, Momoe. “Female Labor Force Participation and Dowries in Pakistan,” Asian and Australasian Society of Labour Economics, Canberra, December 2017.

[2] Makino, Momoe. “Government vs. Private Schools nexus Voting Decision Making,” Japanese Association for South Asian Studies, Tokyo, September 2017.

[3] Makino, Momoe. “Dowry and Female Labor Force Participation in Pakistan,” Society of Economics of the Household, San Diego, June 2017.

[4] Makino, Momoe. “Dowry and Female Labor Force Participation in Pakistan,” Population Association of America, Washington, DC, April 2017.

<2016>

[1] Makino, Momoe. “Dowry and Female Labor Force Participation in Pakistan,” Japanese Association for South Asian Studies, Kobe, September 2016.

[2] Makino, Momoe. “Better than Nothing? Dowry in the Absence of the Legal Protection of Women’s Inheritance Rights,” Population Association of America, Washington, DC, March 2016.

 

【社会への貢献】

<2017>

[1] 牧野百恵. 「途上国研究の最先端:男児選好はインドの子供たちの発育阻害を説明できるか」IDEスクエア:コラム, 2017年11月.

<2016>

[1] 牧野百恵. アジ研専門講座「南アジアのジェンダーと結婚慣習:Missing women、結婚持参金、交換婚、児童婚」, IDE-JETRO, 2016年12月

[2] 牧野百恵.「途上国研究の最前線:公立校と私立校に学習効果の違いはあるのか」『アジ研ワールド・トレンド』2016年8月号, pp.60–61.

 

以上