日本・ドイツ・アメリカの住宅政策I

借家権の保護

金本良嗣

『住宅土地経済』No.1116-23(1994)

はじめに

 日本、アメリカ、ドイツの3国の住宅市場を比較すると、持家比率、住宅価格、住宅の広さ、中古住宅の取引量などについて顕著な相違が存在することが分かる。これらの差のかなりの部分は、日米独3国の間の住宅政策の相違によるものであると思われる。以下では、何回かに分けて、これらの3国の住宅政策を比較する。

 まず、最初に比較するのは、借家権の保護制度とその効果である。わが国では、借地借家法によって民法上の契約自由の原則が大幅に制限されており、借家権保護の程度は国際的に見て極端な程に手厚い。これに対して、アメリカにおいては、州や市町村によっては借家権の保護制度が存在する所があるが、多くの都市では借家権の保護は行われていない。ドイツでは、わが国ほどは極端ではないが、借家権の保護が行われている。以下では、これらの3国における借家権保護制度を比較し、それが賃貸住宅市場にどの程度の影響を及ぼしているのかを検討する。

 現状では、データの入手可能性が限られているので、本格的な計量経済分析は不可能である。しかし、新規家賃と継続家賃の差に関しての刺激的な研究(Brsch-Supan (1993))があるので、それを中心に議論することによって、借家権保護制度の効果の実証的な分析の可能性を探っていきたい。

借家権の保護制度

借家権保護の効果:理論的検討

借家権保護と継続家賃:実証分析