内田 星美(うちだ ほしみ)

〔東京経済大学名誉教授〕

インタヴュー期間 2001年6月4日〜2001年12月20日(全5回)
インタヴュアー 尾高煌之助、橋野知子、梅崎修、森直子、堤一郎
場所 政策研究プロジェクトセンター
キーワード 技術史、産業考古学、産業調査、産業遺跡、技術移転
【インタヴュー内容】
技術史研究の大家である内田星美氏に、「仕事の歩み」を語ってもらったインタヴュー録である。内田氏は、最近、日本でも認知度が高まってきている産業考古学の研究者として先駆的存在である。また、服部セイコーや日本IBMなど多くの社史の編纂をされた内田氏は、自ら数多くのオーラルヒストリーを行ってきた人物である。さらに内田氏は、自宅に科学技術史の文献を系統的に収集した私的アーカイブを運営されているが、そこには職人や企業の技術者の退職記念文集や自分史なども数多く収集されている。本インタヴューにあたって内田氏は、「オーラルヒストリーにでてくる固有名詞」という資料を毎回用意され、それに沿って話しが進んでいる。
内田氏は、1926年に東京・豊多摩郡に生れた。その後、戸山小学校から1939年に7年制の旧制武蔵高等学校に入学し、尋常科、高等科と進んだ。高等科では理科乙類(当時は独語・生物系専攻)に学んだ。この武蔵高校時代の理科教育の中で科学史を学んだことが、内田氏の技術史研究の基礎となった。1945年に武蔵高校を卒業し、東京帝国大学第二工学部応用科学科に入学した。1948年に卒業、学士入学で東京大学経済学部に入学すると同時に、商工省に化学工業調査室員(技官)として入省した。ここで産業調査に本格的に関わり、「調査マン」としてのキャリアが開始された。この時代、国民経済研究協会で産業動向調査のアルバイトも経験している。
1951年には(財)日本繊維経済研究所に移り、繊維業界の調査などを経験するとともに、産業合理化にともなう技術革新と新技術導入の研究に関わっていく。また、内田氏はこの頃から積極的に工場見学を行っている。他方で、1954年に東京大学経済学部を卒業、さらに1957年に東京工業大学の研究生になった。1961年に、設立されたばかりのプラスチック工業調査所に研究責任者として招かれ、業界の統計整備や研究会運営にあたった。
内田氏の技術史および産業史研究者としてのキャリアが開始されたのは、1963年に東京経済大学に新設された経営学部の専任講師に就任してからである。当時、日本では科学史研究が大勢を占める中、技術史が注目を集め始めていた時期にあり、内田氏は「産業技術史」の若手研究者として独自の基盤を固めていく。また科学技術庁の研究会で技術者需要予測に従事している。産業学会の創立メンバーであり、また経営史学会には第6回全国大会から技術移転問題の発表を中心に活躍している。東京経済大学では1964年に助教授、1972年に教授に就任した。
1976年、一年間のサバティカルをロンドン大学インピリアル・カレッジに客員研究員として過ごす。理工学部におかれた科学・技術史講座に席を置くとともに、欧州各国の技術博物館および産業遺跡の視察を行った。産業遺跡の体系的な保存と研究が国際的に認知されたのは、この当時からである。帰国後の1977年、産業考古学会の創立時からの中心的メンバーとなった。この産業考古学会は、日本全国の産業遺跡の視察と研究を主導するとともに、たとえば横浜みなとみらい地区開発にあたって、三菱重工横浜船渠跡調査の実施と保全法の提案などを行っている。内田氏は1985年に産業考古学会会長に就任した。トヨタの産業技術記念館設立など企業博物館づくりの指揮もとっている。
1980年代以降は、服部セイコー、日本電子、日本アイ・ビー・エムなどの社史の編纂に数多く関わった。そこで社内の技術開発や生産工場の現場技術者から数多くの聞き取りを行っている。1997年からは東京経済大学の名誉教授である。
インタヴューに際して内田氏が作成された資料および参考資料は、巻末に収録されている。
【主要参考文献】
内田星美『日本紡織技術の歴史』(地人書館 1960年)
内田星美『産業技術史入門』(日本経済新聞社 1974年)
内田星美『時計工業の発達』(服部セイコー 1985年)
内田星美『西ヨーロッパの産業遺跡』(産業考古学会編集委員会 2000年)
西川俊作、阿部武司編『日本経済史4 産業化の時代(上)』(岩波書店 1990年)
Uchida, Hoshimi, “Evolution of Seiko 1892-1923,” History of the Japanese clock & watch industry 3, (Seiko Corporation 2000)
通商産業省編『商工政策史 第16巻 繊維工業(下)』(商工政策史刊行会 1972年)
日本アイ・ビー・エム編刊『日本アイ・ビー・エム50年史』(1988年)